みなさんはじめまして!角(スミ)です。
普段は、材木屋のセガレとして木にたずさわる仕事を模索しながら、長浜市地域おこし協力隊としての活動をしています。
2年前に長浜市へ引っ越してきて、“長浜の「地名」”について、気になることがあったので、ナガジンに登場することになりました。
気になる「地名」というのがコレです。
バス停に表示されている
『八幡泉町(やわたいずみちょう)』です。
八幡が付く地名は、日本中どこにでもありますが、↓場所はココ。
そもそもこの「八幡泉町」が気になったのは、以前この近くに住んでいた時のこと。
当時の私は車を持っていなかったので、移動手段としてバスを使うことがありました。
引っ越してきたばかりで、はじめて経験する長浜の冬は想像以上に厳しく、寒さを耐えながらバスを待っている間、違和感を覚えました。
目の前のバス停には
『八幡泉(やわたいずみ)町』
なのに、
頭上の信号の標識には
『八幡東(やわたひがし)町』
ん?
バス停の名前は八幡“泉”町なのに、信号の隣にある標識の地名は、八幡“東”町なんで名前が違うの???
最新の地図には、
『「八幡泉町」という地名は、バス停の他に見当たりません。』
真っ先に思い出したのは、近所のこの看板。
『“長坂駅前”というのはミスプリントで、正しくは“長浜駅前”』です。
もしかして、バス停の表示も八幡“東”と“泉”のミスプリントなのか?バス会社の表記ミスならまだしも、昔は町はあったけど、闇の大きな力で町ごと消滅されてしまったのではないだろうか…。
気になりつつも、ずっと頭のスミに閉まっておいたのです。
こんなエピソードをナガジンに話したところ、『それオモロいや〜ん!探ってみよう〜ねぇ〜ねぇ〜』としつこく食いつかれてしまい、今回は「八幡泉町」のバス停付近を歩き、地名の謎を探ることになりました。
地図にない幻の八幡泉町を目指して
まずやってきたのは長浜駅。
せっかくなので目的地の「八幡泉町」まで、バスを使って向かいましょう。
目的地は長浜駅から7つ目のココです。
バスに慣れていないので、路線をしっかり確認しておきます。
③番のりばの近江長岡駅行きのバス発着所で待つことに。
日中は1時間に1本程度の運行なので、時刻表はあらかじめ調べておきました。
しばらく待つとバスがやってきました。
「八幡泉町」まで乗車時間は10分ほどです。
バスを降りる前にボタンを押すこの瞬間が、バスの楽しみだったりしませんか?
「八幡泉町」のバス停に到着しました。久しぶりのバス停に対面して気持ちが高まります。「“イズミ”、ただいま。」
このバス停の向こう側に…
「県道八幡東町」の名前が目に止まります。
バス会社の担当者が、この“東”を“泉”に誤植してそのままにしまったのでは?という、ユニークな結末を期待しつつも、町を歩けば「八幡泉町」の秘密がひょっこり見つかるかもしれないので、これから付近を歩いてみましょう!
八幡泉町の手がかりを探して途方に暮れる
「県道八幡東町」の交差点付近の近くにあった地図から確認しました。
スミズミまで確認しましたが、「八幡泉町」という地名は、特に記載されていないようです。
手当たり次第に、付近を見渡してみましょう。
自動販売機をチェック!
機種によってはこのように住所が書いてあります。
ここの住所は「長浜市八幡東町450」
郵便ポストもチェック!
「長浜市八幡東町622-9」
公衆電話もチェック!
久しぶりの電話ボックスに入ってなぜか笑顔に。
「長浜市八幡東町428-1」
どれも住所は「八幡東」です。
「八幡泉町」のバス停は目の前なのになぜ?
うーんどうしようか…。
何か手がかりになるものはないかな…。
やっぱり歩くしかないな…。
気を取り直してまた歩きます。
道なき道を歩き…
家なき門をくぐり…
昔ながらの和菓子屋さんに立ち寄って…
いちご大福をほお張る。すいません、途方に暮れていました。
和菓子屋の店主さんにこの辺りで「八幡泉町」という地名を探してると話したところ。
「昔はそう呼んでいたね〜。」と有力情報を入手。やはり八幡泉町は存在しました。
ちょっとやる気が戻ってきたのと、バス停から離れてしまったので引き返します。
ずっと探していた“イズミ”は突然あらわれる
今度は、ちょっと脇道へ入ってみましょう。
コンビニの脇にある、1人通れる程度の細い路地へ。
ここ、すごく細い道なのにマンホールがある。水道管が埋設されているから、ひょっとしたら昔は小川だったのかもしれないな。
と、そんなことを考えながら路地を抜けて、住宅地へと進みます。
住宅地に入ると、不自然に蛇行した道がいくつも見当たりました。
「あれ、この道って、元々は川じゃないのかな?」
付近をよく調べてみると、これは…!
「イズミ!」
探していた“イズミ”がありました。
電信柱には地名が記載されていることが多々あります。
「八幡泉町」の「イズミ」と考えて間違いないな…!
ついに手掛かりを発見して、私のテンションも最高潮です。
ちなみに、となりの電信柱も同様に「イズミ」の表記。
どうやら、この一帯が「八幡泉町」のエリアのようです。
バス会社による表記ミスではなく、旧町名だったんですね。
そうとわかれば、「イズミ」と表記されている電信柱を辿って、エリアの輪郭をつかみたくなります。周辺を探索しましょう。
この電信柱も「イズミ」
ここも「イズミ」
こんなにも「イズミ〜ン!」
漢字の「泉」まで!
ザッと電信柱を調べただけでもこの範囲に。
歩いていると、あることに気づきました。
『そういえば、さっきからずっと水の流れる音が聞こえてくる』
「八幡泉町」のエリアを歩いている間、どこからともなく、“せせらぎの音”が聞こえてくるのです。
ふと、民家の敷地内に目をやると、井戸がありました。
ずっと水が湧き出ているようです。
注意して住宅街を歩くと、同じような光景がいくつもあることに気がつきました。
この町の民家は、
どこの家庭も井戸だらけ。
湧き水があるのでしょう、どれも現役のようです。長浜に井戸のある光景が残っていて、思わぬ町の特徴が見えました。
『八幡泉町は、八幡東町になった今も井戸水が家々の軒先に存在し、せせらぎの音が静かにひびきわたる特徴的な町並みが残っていました。』
八幡泉町は、むかし長浜にあった湧水地をあらわす地名だった
これにて一件落着か、スタート地点の「県道八幡東町」交差点に戻ってきました。
ん?
あれ?
「ビジネスホテルいずみ」
こんなに大きな「イズミ〜ン!」
これまた「八幡泉町」の手がかり!
なんと、スタート地点のバス停の目の前に、「八幡泉町」の手掛かりがありました。
ホテルを訪ねてフロントの方にお話を伺ったところ、地元の人間ではないので、詳しいことはわかならいがと前置きがあった上で、
「オーナーの名前が泉さんと言うことではなく、おそらく地名からついたもの。ビジネスホテルいずみの建物よりも南側の地域の方に聞くと良いかもしれません。」
と丁寧に教えていただきました。
やはり「ビジネスホテルいずみ」の由来は地名の「イズミ」でした。
頭上の看板にまったく気づかず、不覚です。
下ばかり向いていないで、上を向いて歩かないと…。
その後、図書館で調べてみた
このあと図書館に行き、長浜の地名に関する書籍をあたってみました。
すると、
『泉、清水、何々井などの地名はいずれも水に関係するものである。この内、泉と清水は文字通り湧水地をあらわしている場合が多く…』
とのこと。
「八幡泉町」は、文字通り湧水地をあらわす由緒ある地名だったのです。
さらに、図書館で、1983年(昭和58年)の長浜市の地図を見せてもらったところ、「八幡泉町」の町名が地図に記載されていました。
近江鉄道株式会社自動車部に問い合わせてみた
いっそのこと聞いてみようと、バス停を管理されている近江鉄道株式会社自動車部に問い合わせたところ、以下の回答をいただきました。
バス停名が「八幡泉町」となった経緯には理由があるようです。
こちらは『推測も含みますが』とのことですが、
・「八幡泉町」停留所はその昔「泉町(いずみちょう)」停留所だった。
・しかし昭和50~60年頃に、近くを走るバス路線・浅井線に「泉町(いずみまち)」という停留所が新しくできた。
・読み方は違うが、“泉町”という漢字が被ってしまうため、先に泉町を名乗っていた「泉町(いずみちょう)」が、「八幡泉町」に改名した。
ご丁寧に対応してくださり感謝の気持ちでいっぱいです。(バス会社によるミスプリントを疑ってしまい失礼しました。)
日常のちょっとした謎を、こうしてじっくりと深めたのはいつぶりでしょう。せわしない日々を過ごしていると、わからないことはついついWebですぐ検索してしまいます。八幡泉町の謎は、目の前の現実のおもしろさと奥深さを教えてくれました。
これにて、「八幡泉町」エリアの散策は閉幕です。
せっかくなので交差点の目の前にある金沢でかねた寿司で、贅沢なランチを食べて解散することにします。
歩き尽くしたあとのランチ最高です!お寿司うまっ
ナガジンよりお知らせ
今回はスミくんとイズミについて散策しましたが、ここまで読んでくれたあなた自身が楽しい・面白いと思うことや興味のあるものをブログ記事にしてみませんか?気になることを一緒に調べて、ナガジンで発表してみましょう〜!詳しくはこちらからお問い合わせください。お待ちしております。