「私、生まれも育ちも葛飾柴又。帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅とはっします。」
こんなセリフからはじまる映画「男はつらいよ」。
1969年に第1作が公開され、これまでお盆やお正月に全49作が公開され続けてきた。2019年は誕生から50周年の節目で、22年ぶりに50作目が上映される。
「寅さんが帰ってくる。」
渥美清さんが1996年に亡くなり、世代的に映画館で見ることができなかった映画なので、こんな時がくるんだと思うと気持ちが高ぶってしまう。
だから、この興奮が冷めないうちに、寅さんが歩いた町を歩いてみることにした。
男はつらいよのロケ地として滋賀県内では2ヵ所登場する。
これまでに、滋賀県内では2ヵ所が男はつらいよのロケ地になっている。
1つ目は、彦根市。
男はつらいよ〜寅次郎あじさいの恋〜(第29作/1982年)。主なロケ地は京都府丹後伊根で、マドンナはいしだあゆみ。
この映画の終盤に少しだけ、彦根城の城下で商売をしている寅さんがいる。
そして2つ目は、ここ長浜市。
寅さんが歩いた長浜を探してみよう
ここから先は映画のネタバレになるのと、観ていない方にとっては、なんの話かさっぱり分からない話なので、DVDか動画配信サービスで「男はつらいよ〜拝啓車寅次郎様〜」を見て欲しい。
男はつらいよの中で寅さんが歩いた長浜は大きく分けて、「菅浦」「大浦」「黒壁スクエア」の3つに分けられる。(※甥っ子の満男さんが登場する場面はこちらの記事へ)
旅の途中の寅さんは琵琶湖のほとり菅浦に訪れる
ひとりカメラを持って車で旅行に訪れた典子(かたせ梨乃)。琵琶湖のほとりで寅さんと出会う。
漁港の防波堤に座り、近くの大八商店で買った朝食のサンドイッチを食べている典子に、「良い景色見ながら食うと美味いだろ?」と声をかけた場所をみつけた。
少しの会話だけで食事を邪魔しないよう立ち去る寅さん。寅さんが訪れた20数年前も今も、菅浦のこの風景はまったく変わっていない。
寅さんは長浜市西浅井町「菅浦」のこの辺りを歩いた
大浦までやってきた寅さん。再びここで典子と出会う
「そういえばあんた写真機いじってる時は楽しそうだもんね。歌なんか歌って」と寅さんが典子に声をかける。
琵琶湖の景色を撮る典子との会話の後に、「足場悪いからよぉ、気をつけなよ。転んで怪我しないように。あばよ!」と寅さんが振り返ったとたん、典子が岩場にはまりズッコケて怪我をする。
車の手前にあった生垣こそなくなったが、ここからの対岸の景色は今も映画の中とまったく変わらない。
すでにお気づきかもしれないが、さっきから映画のワンシーンを再現している。
ただし、
こんな人は映画に出てこない。「誰だおまえは!」と自分で自分を罵ってやりたい。
ちなみに後ろの材木屋さんの倉庫も当時のまんま。
寅さんは長浜市西浅井町「大浦」のこの辺りを歩いた
気を取り直して
明日曳山祭りへ行こうと典子を誘うが、しかし
腕を怪我した典子。骨つぎの先生を探しに再び菅浦へ。
柔道着姿の骨つぎの先生が、怪我をしたのは「きれいな女の人です~」と聞いて駆け降りてくる階段がこちら。
治療を終えた典子。夕暮れ時に漁港へ帰る夫婦船を見ながら、寅さんと話した場所。
「長浜の祭っていつだったっけ?」と青年に確認し、明日みんなで明るくパーっと曳山祭りを見に行こうと寅さんが言う。
翌朝、典子が怪我したことを知った旦那(平泉成)が民宿まで駆けつけた。寅さんは車で帰る二人を見送る。
その後、一人長浜へと向かう。
寅さんは長浜市西浅井町「菅浦」のこの辺りを歩いた
曳山祭りを鑑賞中の満男と偶然出会う
同じ頃、甥の満男(吉岡秀隆)が学生時代の先輩に出会いに長浜へ訪れていた。妹の菜穂(牧瀬里穂)が長浜を案内するなか、曳山祭りをみている際に後方から突然寅さんが現れる。
短い言葉だが、寅さんの口から満男さんの胸を熱くさせる言葉が出る名シーン。当時独身だった私の胸にもビッシビシ響いた。
寅さんは二人を邪魔しないよう急いでその場を去る。満男が追いかけるも間に合わず。これ以降の長浜での登場場面はなく、東京(柴又)と鎌倉へ。
寅さんは長浜市「黒壁スクエア」のこの辺りを歩いた
僕と寅さんの思い出
こんな思い出がある。寅さんのロケが長浜市内で行われた日。
何も知らずに友人たちと自転車に乗って長浜の黒壁スクエアまで遊びにきていた。曳山まつりの時期でもないのに山車が出て人だかりができている。
何をしているんやろう?と気になって近づいたところ、誰かが映画の撮影やと教えてくれた。
中学生だった私は、ここで映画の撮影風景をみていた。いや、たぶん本音を言うと寅さんというより人気絶頂期の牧瀬里穂に同級生たちと興奮していたはずだ。
大人になってふとこの日のことを思い出すことがあり、仕事帰りにTSUTAYAでレンタルして男はつらいよをみた。
記憶ある町が映画の中にあることに興奮した。それがきっかけになり、男はつらいよを1作目からみてみると寅さんの型破りなキャラクターに笑い、強い言葉に励まされた。なぜか古い映画なのに未来を感じることができた。
いつの間にか日本中旅をする寅さんのファンになっていた。寅さんが歩いた長浜を自分も歩きたいと思うようになり、旅行へ行く際は近くに寅さんのロケ地は無いかと探したり、何度も映画を見返しているうちに、寅さんになってみたい気持ちが高まってしまった。
「男はつらいよ〜拝啓車寅次郎様〜」(第47作/1994年)は、長浜を知っている人には、ぜひ見てもらいたい映画だ。まだみていない方は機会があればみてほしい。
【後編】寅さんの甥っ子満男さんが歩いた長浜はこちら
寅さんの甥っこの満男さんは長浜駅・黒壁スクエア周辺でロケをされている。その記事はこちらから。